投資の知識 実物投資編 金の価格について
こんにちは。
exit.です。
今回は金の価格について考えていきたいと思います。
金は実物資産として、資産保全の役割を持つ資産(インフレヘッジができるため)として考えられています。その金の価格ですが、2019年11月より目立って上昇をしてきました。新型コロナウイルスが世界的に流行する少し前の時期で、2020年3月からは価格の上昇の速度が上がっています。金価格グラフは以下のリンクから見ることができます。グレーに色づけされているのは、不景気の時です。見ていただくと、不景気になる前後で金の価格が大きく上がっていることが見て取れると思います。ちなみに、グラフを見ていただくと1970年代を境にして金の価格が大幅に上昇していますが、これは、1971年8月15日(日本時間では16日)に当時のアメリカ大統領のリチャード・ニクソン氏が金ドルの交換停止(ニクソン・ショックです)をしたことが転機になっています。その後の、1980年代や1990年代は金の値動きはさえないですが、これはFRBやヨーロッパの銀行が自身の保有する金を市場に供給することで、金の値段を引き下げドルの価値を維持しようとする政策によるものです。2001年のITバブル崩壊以降また金の価格は上昇を続けました。そして新型コロナによる、市場の混乱や不透明性の高まりを受けて、今に至っています。金の価格を見るだけで当時の世界情勢や経済について知ることができるというのは興味深い点だと思います。
https://www.macrotrends.net/1333/historical-gold-prices-100-year-chart
さて、歴史的に見ても金の価格は高値圏にあるように見えますが、本当にそうなのでしょうか。ここでは一度見方を変えて別の角度から見ていきたいと思います。以下のリンクで見ることができるのはGold to Base Money Ratioの推移です。これは金の価格をマネタリー・ベース(FRBのバランスシート(貸借対照表)の規模とほぼ一緒です)で割ったものです。グラフを見ていただくとわかりますが、直近の5年はこの指標は0.5以下の数値で推移しています。特に2020年2月から2020年5月までの下がり方は、FRBの量的緩和政策によりマネタリー・ベース(市場に出回る資金)が増えたことを受けています。その後、金の価格の上昇を受けて7月の本コラム執筆時(2020年7月21日)には0.38となっています。この指標をみると、割高感はなく、むしろまだ上値の余地が大いにあるように見えます。さらに、現在世界各国がゼロ金利政策(先進国)や金利を下げている(新興国)中で、債券への投資の妙味がなくなっている、少なくとも薄くなっていることも、金価格の上昇に一役買っています。また、グラフの中で一番高い数値は1980年1月の5.13となっており、この数値に近づくのであれば、まだ10倍以上金の価格が値上がりすることも、数値だけ見て判断するのであれば可能性はあります。
https://www.macrotrends.net/2485/gold-to-monetary-base-ratio
上記のことはあくまでも可能性のことであり、将来金の価格がどうなるかはわかりません。金はそれだけでは価値を生み出しません。株式のような配当金、債券のような金利収、不動産のような家賃収入などといったフローは生み出してはくれないためです。今後、世界がコロナウイルスによる景気後退から立ち直り、金融引き締め政策による金利の上昇の局面になれば、金よりも債券が好まれる相場になる可能性もあります。ただし、ペーパーアセットではなく、実物資産として価値を保ってきている金がいきなり価値ゼロになる可能性はないと思われますので、ポートフォリオの一部に組み入れておくことには有効性があると考えています。
次回も皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
本コラムは、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。投資判断は投資家の皆さまの自己責任でお願い致します。