世界経済 海外企業決算編 バークシャーハサウェイ社第2回目
こんにちは。
exit.です。
今回は、以前にコラムで取り上げましたウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャーハサウェイ社の年次決算について取り上げます。2020年2月2月22日(土)に2019年度の年次決算が発表されました。今回の年次決算の内容については、同社のホームページ(http://www.berkshirehathaway.com/)からAnnual & Interim Reportsを選択していただき、ご覧になりたい報告書をクリックしていただければ内容を見ることができます。
年次決算書にはウォーレン・バフェット氏が株主にあてた手紙があり、毎回その手紙の内容が注目を集めることも多いです。
手紙にはいくつかの論点が書かれていますが、今回はその中で3点ほど紹介したいと思います。
①814億ドルの売り上げを計上していますが、内訳としては、営業収益で240億ドル、実現したキャピタルゲインが37億ドル、未実現のキャピタルゲイン(評価益)が537億ドルとなっています。なお、未実現のキャピタルゲインいついては、米国のGAAP(一般的に公正妥当と認められた会計基準)の変更の影響を受けていることが記載されています。
②内部留保の力として、1924年のエドガー・スミス氏の著書の「長期投資としての普通株式(Common Stocks as Long Term Investments)」が投資の世界を変えました、ということを書いています。多くの人はインフレ下では株式投資を行い、デフレ下では債券投資を行うのが良いと考えますが、実際はそうではないということが示されています。本当に良いのは、企業が内部留保を行い、企業がそれを成長性のある事業に再投資することで、それがより大きな富を生み出すために必要なことだと訴えています。
③その他の論点として最後にいくつか点が示されていますが、その中の1点に自社株買いについて触れている個所があります。バフェット氏とマンガー氏の両氏が、株価が同社の本質的価値を下回っていると同意して、かつ、自社株買いを行ってまだ現金が十分に残る場合に実行すると書かれています。同社は2019年には発行済株式の1%に当たる50億ドル分の自社株買いを行っています。
②と③に関しては、どちらも自社株買いをはじめとした、株主還元について考える際に有益な考え方になると思います。多くの企業が自社株買いを配当と同じように株主還元の1つとして実施することがありますが、それが本当に株主にとって良いことなのかどうかは慎重に考える必要があります。株主・株価対策のパフォーマンスとして実行されることも多いからです。このような場合、自社株買いで株価は一時的に上昇しますが、その上昇が長続きしないこともあるからです。自社株買いについては、また機会を改めてコラムで取り上げたいと思います。
次に、バークシャーハサウェイ社の特徴ですが、同社はGEICOとジェネラス再保険といった保険会社から生み出されるキャッシュを基にして株式をはじめとした投資をして収益を上げる、という点にあります。潤沢なフリーキャッシュフロー(「営業キャッシュフロー」-「投資キャッシュフロー」)を持っており、財務基盤が安定していることも確認ができます。ちなみに、2019年のキャッシュフロー計算書では、このフリーキャッシュフローが約330億ドルあることが確認できます。また、安定的にキャッシュを生み出す事業を持っているということは事業収入も安定していることも意味します。
そして、バークシャーハサウェイ社の今後の課題として、大きなものとして注目されているのは、後継者問題です。同社はウォーレン・バフェット氏と同氏の右腕的存在のチャーリー・マンガー氏の両氏の手腕に依存しているところが多く、特にバフェット氏は投資の世界ではカリスマ的扱いとなっています。この両名の後を継いで事業を行うとなった場合に、同じようなパフォーマンスを企業として出し続けることができるのかという点に疑問符が付くことがあるためです。今回の株主への手紙の中で、The Road Aheadの欄で触れられていることでもあります。
次回もまた、皆様のお役に立つ情報を提供できればと思います。
※本記事は特定の銘柄への投資を推奨するものではございません。
投資はくれぐれも自己判断にてお願い致します。