政治経済 東証が公表した資本コストや株価対策を意識した経営の実現に向けた対応の中身について
こんにちは。
exit.です。
今回のコラムでは、東証が公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について取り上げます。
以下は、2024年1月15日に東証より公表された『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表の公表について』へのリンクです。
https://www.jpx.co.jp/news/1020/20240115-01.html
今回の公表の前に、東証では2023年3月にプライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を実施しています。あくまでもプライム市場とスタンダード市場に上場している企業が対象であり、グロース市場に上場している企業は対象とはしていない点には留意が必要です。グロース企業に上場している企業に関しては、まずは資本コストや株価を意識する前に売上高や利益を成長させていく(売上高や利益を上げていくこと)が念頭に置かれていると考えられます。要請や好評の内容について、日本に多い上場した直後に一番株価が高くなる上場ゴールと呼ばれている状況を改善する効果について、期待することは難しいように思われます。
今回公表されている内容の中身を見ると、プライム市場ではおよそ49%の企業が開示(検討中を含む)を行っていますがスタンダード市場では19%程度が開示を行っているとしており、プライム市場とスタンダード市場での割合の乖離が目立っています。また、時価総額が大きくPBRが1倍未満の企業において一番開示割合が多くなっています。しかし、PBRが高い業種の開示は進まず、PBRが低い業種のほうが開示は進んでいるという結果にもなっています。英文での開示は全体的にはあまり進んではおらず、海外投資家へのアピールとしての効果はまだ弱いとみることができそうです。
東証の資料では資本コストが説明されている箇所がないため、ここで説明をしてみます。資本コストとは、大きく分けて債権者が要求するリターンと株主が要求するリターンに分けられます。債権者や株主が要求するリターンは企業から見ればコストとなります。債権者が要求するリターンは貸付利息や債券利息のような金利・利子であり債権者が要求するリターンは比較的容易に計算ができます。しかし、株主が要求するリターンは計算が容易ではありません。株主が要求するリターン=配当と考える場合もありますが、多くの場合ではCAPM(資本資産価格モデル)を使って計算されます。CAPMの計算は少しややこしく、長期国債の利回り(10年債の利回り=リスクフリーレートと呼ばれます)に株式市場の平均の収益率に対する感応度であるβ(ベータ=簡便的にリスクの大きさと考えてください)にマーケットリスクプレミアム(株式市場に投資した際に株主が望むリターンの大きさと考えてください)をかけたものを足したものとなります(つまり、株主の要求するリターン=リスクフリーレート+ベータ×マーケットリスクプレミアム、となります)。資本コストとは、債権者が要求するリターンと株主が要求するリターンに分けられると書きました。ただし、負債コスト(債権者が要求するリターン)と株主コスト(株主が要求するリターン)の割合を考慮する必要があるため、実際にはそれぞれを加重平均する必要があります。資本コスト=WACC(加重平均資本コスト)=負債割合×(支払利息・支払金利)+株主資本割合×(リスクフリーレート+ベータ×マーケットリスクプレミアム)となります。
※このあたりの議論はかなり複雑であるため、イメージだけつかんでもらえればと思います。
東証は今まで日本の株式市場が海外の株式市場と比較して評価されていない理由を、資本コストや株価を意識した経営がされてきていなかったためであると考えています。今回の東証の公表は、東証が本気で企業に対して株価や資本コストを意識して経営を行うことを働きかけているものとして注目されています。
次回も皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
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