政治経済 日銀保有のETFの出口戦略を考える
こんにちは。
exit.です。
今回のコラムでは、日本銀行が保有しているETFの出口戦略について少し考えてみたいと思います。
そもそも日銀のETFの買い入れは2010年の日銀政策会合にて決定され、同年12月15日から実行された政策です(当時の日銀総裁は白川方明氏)。この政策の狙いは、日銀自らがリスクをとることで、リスクプレミアム(=投資家が求める期待収益率)に働きかけ、市場の不安定な動きを抑制し、企業や投資家のリスクをとる行動(=投資など)を促進することにあります。日銀のETF買い入れは株式市場を活性化させるための呼び水としての効果が期待されていました。そして今では簿価37兆円規模のETFを抱えるまでになりました。日銀のETF買い入れの効果に対しては、市場の安定や株価の底割れの防止などの効果があったとする一方で、官製相場であり、当初の目標であったインフレ率2%に対する効果は曖昧であり、企業の流動資産(現預金など)は増えても設備投資は増えていない、との批判を受けることにもなりました。また、日銀保有のETFは、国債のように満期償還まで保有しておけば日銀のバランスシートから消滅して、(時間はかかりますが)自然と金融政策は正常化できるというものではないため、出口戦略が非常に重要になってきます。
①とにかく売却する方法
これは、一番手間がかからない方法にはなりますが、日銀が買い手から売り手に回ったとなると市場に与える影響は強くなることが想定され、一気に株価が下落する要因となる可能性があります。これは市場の不安定化につながるものであり望ましいものではなく、この政策を実行する可能性は低いと思われます。
②株式市場(相場)が2%上がったら売却するなどルールを設定する方法
これは例えば東証株価指数(TOPIX)が2%上昇した場合に売却する方法です。買い入れの時にはTOPIXが2%下落したらETFを買い付けるという「2%ルール」(政策修正前は0.5%ルール)が意識されており、これが官製相場と批判される原因となりました。買った時の逆のパターンで売る方法もルール設定するため比較的簡単な方法ですが、これも株価が大きく下落する要因になる可能性や株価が上がらなくなる要因となる可能性があり、これもまた官製相場と批判される可能性が高くなる方法と言えそうです。最初の方法に比べればまだ実現可能性は高そうです。
③民間(個人投資家)に売却する方法
これは日銀が政府系の金融機関などにETFを売却し、その売却先の金融機関で専用の投資信託(もしくは新たなETF)を設定し、個人投資家に民間金融機関などを通じて売却する方法です。購入者には割引で投資が出来るようにしたり、税金面で優遇したりすればある程度は消化ができると見込まれます。ただしこの方法では、お金を持っている層(富裕層)を優遇しているとの批判が出る可能性がある、投資経験のない人が新たに購入者となるかについては疑問があるなどの問題点はあります。
④政府系金融機関や政府系のファンドに買い取ってもらう方法
政府系金融機関や政府がファンドを作って日銀のETFを買い取る方法です。政府系金融機関や政府系ファンドがその後運用すれば、売却益や配当金を成長投資に回すことが可能になります。この場合は、運用がうまく行かなかった場合や、そもそも運用が長期になることが想定されるので責任者をどうするのかという問題点があります。また、買い取るための資金をどこから捻出するのかも問題点になると考えらえます。
日銀のETFの出口戦略についていくつか簡単に考えてみましたが、どれも一筋縄ではいかないように思います。今後の植田総裁の発言に出口戦略のヒントがあるかもしれません。その時は、日本の金融政策の大きな転換点となる可能性もあります。
次回も皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
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