世界経済 海外企業編 Robinhood Markets Inc.
こんにちは。
exit.です。
今回は、2021年7月1日にSECにIPO申請を行ったRobinhood Markets Inc.(以下、ロビンフッド、ティッカー:HOOD)について取り上げたいと思います。
ロビンフッドは2013年4月18日にバイジュ・バット氏とウラジミール・テネフ氏によって設立されました。設立当初は証券取引(株式の売買や株価のチェックなど)だけでしたが、2018年には暗合資産(仮想通貨)取引もできるようにしています。また、金融の民主化(We’re on a mission to democratize finance to all)を掲げている企業でもあり、去年や今年はロビンフッダー(Robinhooder)と呼ばれる人たちが個別株式の値動きに大きな影響を与える事例が目立っており、株式市場において無視できない存在になっています(ゲームストップ(GME)やAMCシアターズ(AMC)などで注目されました)。
次にロビンフッドのS-1(目論見書)を見ていきたいと思います。2020年と2019年を比較すると売り上げは、277.5百万ドルから958.8百万ドルと3.45倍になりました。利益の金額を見ると-106.5百万ドル(純損失)から7.4百万ドルの黒字になっています。2021年の第1四半期を見ますと、売上高は522.1百名万ドルとなり2020年の第1四半期と比較して、4.1倍ほどになっています。ロビンフッドの収益の柱となっているのは、取引に応じた収入(Transaction-based revenues)が8割ほどを占めています。これは、ロビンフッドを利用して株式を成行(注文の成立を優先させる取引)で注文をした際に、高速取引を行う業者にデータを流して、リベートを受け取るというものです。例を挙げて説明をしますと、個人投資家がある会社の株式100株の買い注文を出したときに、高速取引業者にデータを渡します。この時、株価が10ドルであった場合に業者は10ドルで株を買い、11ドルで買い注文を出した個人投資家に売却をします。投資家は1,100ドルを支払い、高速取引業者は1,000ドルで買った株を1,100ドルで売却しているので、100ドルの利益を上げて、この利益の一部をロビンフッドにリベートとして支払っています(これに関しては米国金融取引規制機構から罰金を支払うことを命じられています)。投資家からすると、本来10ドルで買えたものを11ドルで買っていることになるので、不利になります(売買手数料がかかっていなくても実質的には手数料を見えない形で払っているようなものです)。その他のロビンフッドの収益としては、信用取引に関する金利手数料やプレミア会員が支払う月額利用料などがあります。
※2021年の第1四半期は1,433百万ドルの赤字でしたが、これは転換社債の資金調達に対する市場価値の調整に関連するものの影響のためです。
ロビンフッドもコインベース同様に取引への依存度が高い収益構造になっています(コインベースの売買手数料とロビンフッドの高速売買取引業者からのリベートという違いはありますが)。また、暗号資産(仮想通貨)の取り扱いを巡ってSECから質問を受けている状態であることもメディアが伝えており、このことがIPOのスケジュールが遅れていることの原因になっていると考えられます。株式市場や暗合資産市場からの注目度は高いと考えられますので、ロビンフッドの上場後の株価の動きには注意が必要かもしれません。
以下のリンクが、ロビンフッドのS-1(目論見書)とロビンフッドのHPになります。まだ上場がされていないので、日本での情報収集にはまだ限りがあるかもしれませんが、取引開始となれば、日本語でアクセスできる情報が増えてくると思います。ただ、事前にどのような企業なのかを知りたい場合には是非以下のリンクにアクセスして確認されてみてはいかがでしょうか。
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1783879/000162828021013318/robinhoods-1.htm
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