政治経済 経済学編 行動経済学 第2回目
こんにちは。
exit.です。
今回は以前に取り上げた行動経済学の第2回目です。
第1回目のコラムでは、メンタルアカウンティングとポジティブバイアスについて書きました。以下に振り返りとして以前のコラムから引用します。
メンタルアカウンティング(Mental Accounting)とは、同じお金であるにも関わらず、どのような名目のお金なのかを自分の心の中で勝手に仕分けしてしまう現象のことです。
ポジティブバイアス(Positive Bias)とは、物事の良い面のみを見てしまい、ネガティブな情報には目を背ける傾向が強くなる、という認知バイアスの1つで、楽観性バイアスとも言われています。
そして、行動経済学の第2回目の今回は、プロスペクト理論と損失回避バイアス、そして現在志向バイアスと現在維持バイアスについてみていきます。
まずは、プロスペクト理論(Prospect theory)とは、不確実性下における意思決定モデルの一つで、ダニエル・カーネマン氏が行動経済学者の代表的な方です。端的に言ってしまうと、人間は利益が確実に獲得できる状況では、人間はリスク回避的に行動し、損失が発生する局面になると、リスク選好的な行動をとるようになる、というものです。例を挙げて少し説明していきます。
AとBの2つのくじがあり、Aを選ぶと確実に5,000円がもらえて、Bを選ぶと70%の確率で10,000円が、30%の確率で0円になります。この場合、多くの人がAのくじを選びます。基本的に、人間は合理的な存在ではなく、リスク回避的な存在である、と行動経済学上は考えられています(数々の実験で証明されたことでもあります)。ところが、この例を、Aを選ぶと5,000円の罰金を確実に支払うことになり、Bを選ぶと70%の確率で10,000円の罰金を支払う必要があるが、30%の確率で支払わなくてもよい、というものに変えると多くの人がBを選ぶ人が増え、結果が逆転します。確率の期待値を考えると、最初の例では、Bを選ぶほうがよく、後半の例では、Aを選ぶほうが合理的な選択となります。それなのに、取ってしまう行動は全く逆のものになってしまいます。このことは、私たちが「利益」よりも「損失」に感情が大きく動かされてしまうことに原因があります。また、その感情は金額の大きさに比例しない、ということもわかっています。例えば、ギャンブルで10万円勝った人が、さらに5万円勝った場合と5万円負けた場合を比較すると、買った場合の得をした感情よりも、5万円負けた場合の損をした感情のほうを強く感じてしまいます。ギャンブルで負けている人が、取り返すためにさらにお金をつぎ込む、という行動は、最初に負けた分を取り戻せるかもしれないという感情が、さらに追加で負けることになるかもしれないという感情よりも大きくなるためだと説明ができます。これを防ぐためには、サンクコストの考え方を知って、冷静になることが必要だと思います(ただし、依存症になっている場合は専門機関への相談が必要になります)。
また、ここで説明される「人間は利益が確実に獲得できる状況では、人間はリスク回避的に行動し、損失が発生する局面になると、リスク選好的な行動をとるようになる」という性質は損失回避バイアスと呼ばれます。
現状志向バイアスとは、未来の利益よりも、現在の目先の利益を優先してしまうことで、現在維持バイアスとは、未知のものや未経験のものを受け入れたり、行ったりすることに対して心理的な抵抗を感じ、現在の状況に固執してしまうことです。志向と維持が違うだけですが、意味合いが大きく違います。現状維持バイアスに関しては、損失回避バイアスが働くことと慣れ親しんだものを好む傾向にあることが主な原因となります。現状志向バイアスに関しては、今すぐに利益や便益を得たいという感情的な判断が原因となります。これらを防ぐ方法としては、現状維持バイアスに対しては、現状維持バイアスというものがあるということを認知することとデータや第3者の活用などが挙げられます。現状志向バイアスに対しては、短期的な目標と長期的な目標をセットにして考える習慣をつけることが、このバイアスへの対処法となります。
私たちがとる行動は、知らず知らずのうちにここに挙げているようなバイアスなどの影響を受けているケースがあります。正しく知り、対処することで、日々の生活で損をしたり、投資における不合理な判断をしたりすることを防ぐ一助にはなると考えております。
次回も皆様のお役に立つ情報を発信していきます。