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政治経済 世界のニュース編 コロナショック後の経済について

政治経済 世界のニュース編 コロナショック後の経済について

こんにちは。

exit.です。


今回はBloombergの4月5日の記事「Dangerous Disinflationary Shock Slams Reeling World Economy(危険なディスインフレーションショックが世界経済に大きな打撃を与える)をご紹介しながら、経済のコロナショック後の経済見通しについてのそれぞれの立場簡単な解説を行いたいと思います。


※ディスインフレーションとは、物価の上昇率のペースは下落をしていくが、需要が減退と供給超過によって起こされるインフレーションとは異なるものと定義されるものです。


2020年の上半期はコロナウイルスの抑え込みに各国があらゆる手段を講じて、感染がある程度収まるまでその対策を継続するものと考えられます。しかし、経済のことを考えると、現在のことだけではなくコロナショック後のことにも目を向けていかなければなりません。世界各国が新型コロナウイルスでの経済対策として大規模な金融政策(金融緩和)及び財政支出政策をとっていますが、それが今回のウイルス騒動が収まった後の世界経済にどのような影響を与えていくのでしょうか。


まず現段階では、新型コロナの感染拡大を防ぐためにまだ人の動きを止めている、もしくは人の移動の制限を設けている状態ですので、世界的に消費が冷え込み、その結果、消費者物価指数がデフレと呼ばれるレベルにまで悪化する可能性があります。また、各国の中央銀行は金融緩和を行い、政策金利を最低レベルまで引き下げている状態で、さらにそれの状態が数年継続される可能性もあると指摘されています。


さて、ここでは記事のなかで名前が挙がってきている人たちとその主張を簡単にまとめていきたいと思います(すべての主張を取り上げてはいませんので、ご了承ください)。


JPモルガンのエコノミストのジョゼフ・ルプトン氏は「世界的に強力なディスインフレーションへの潮流が高まっています」と警鐘を鳴らしています。また、ルプトン氏と同僚たちが2020年の半ばごろに一時的に消費者物価指数が数十年ぶりに前年割れする可能性があることを予測しています。その多くは原油価格の急落に起因するものですが、原油の潜在的な生産量の削減の報告があってもまだ、今年の1月1日から原油価格は約55%も減少しています。


バンク・オブ・アメリカの世界経済調査長のイーサン・ハリス氏は「少なくとも次の2年間、FRBは政策金利をゼロにするだろう」と語っています。


ECBの理事会のメンバーのロバート・ホルツマン氏は「デフレを排除することはできないが、予測を立てることは拒否する」と述べています。「もしデフレが実体経済の落ち込みに起因しているなら、金融政策単独では解決が難しい」とも述べています。


今回の新型コロナウイルスに対する対応が長期的にはインフレを招く可能性があることを指摘する専門家もいます。ロンドン・スクール・オブ・エコノミーの名誉教授のチャールズ・グッドハート氏とトーキング・ヘッズ・マクロエコノミクスの創始者のマノジ・プラダーン氏は「戦後のように、インフレが起こり、5%以上のさらに10%以上のインフレが2021年に起こるかもしれない」と回答しています。


その一方で、ハーバード大学の教授のジェイソン・ファーマン氏は4月2日にブルームバーグのラジオで「インフレを恐れるべきではない。インフレが十分な需要があるということのサインだ」と答えています。


コロナショックの後のインフレを警戒する人や逆に適度なインフレであれば問題がないと考えている人、デフレを警戒する人と様々な考えを持つ人が記事の中では出てきています。ここでは、少し経済学の紹介をしながら、それぞれの立場の主張を見ていきたいと思います。


まず、コントロールできないレベルのインフレ発生を恐れている人たちは、今回の大型の金融緩和政策や財政赤字に支えられる財政支出政策を行うことによって、貨幣が市場にあふれ、貨幣の相対的価値が下がることにより物価上昇の圧力が高まり、やがてインフレ率が政府や中央銀行にコントロールできないレベルにまでなってしまう事態に陥る可能性に対して警戒感を持っています。この点に関しては、増税や金融引き締めによって、貨幣を市場から吸収することで終息を目指すことができると考えられます。しかし、実施していた金融緩和や財政支出の規模が大きい場合、引き締めによって市場から資金を引き揚げる際に、市場に対する影響が大きすぎるため、思うように進まない事態(ここが大規模な金融緩和や財政支出を行った後の出口戦略の難しさです)を念頭に置いた主張と言えそうです。


次に、デフレを警戒する人たちは、人の移動が制限されることで、消費が減少し、それにより企業活動に影響が及び、雇用の面では失業率の上昇や賃金の切り下げ、企業活動の面では投資意欲の減退し、デフォルトや倒産が増えることにより、消費者の購買意欲を低下させ、さらに消費が減少し、その結果企業の業績が悪化して投資の延期や失業者の増加を招く、というデフレスパイラルに突入する可能性を考えています。各国の政府はそれを防ぐために金融政策や財政政策などの手を講じていますが、それでも経済への悪影響をすべて取り除くことは不可能で、さらにその深度がどの程度のものになるのかの予測もまだまだ分かっていません。コロナショックからの回復が遅れれば、物価上昇を伴った景気回復も遅れ、結果として政策金利をゼロもしくはゼロに近い水準で当面の間固定せざるを得ない状態になります。この場合は、次の金融危機などが発生した際の金融政策の選択肢を狭めてしまう結果になってしまいます。


最後に、適度なインフレであれば問題がないと考えている人たちは、需要が供給を決定する(イギリスの経済学者ジョン・メナード・ケインズ氏の有効需要の考え方です)との考え方に依っているため、適度なインフレの発生は十分な需要が存在していることの証左であると考えます。ウイルスで都市閉鎖が起こり、需要が減ってもその分政府が保証金などで景気を下支えし、感染拡大が止まり、都市閉鎖が解除された段階で今度は民間消費を支える政策を打ち出せば有効需要を作り出すことができ、デフレに陥ることを防ぐことができると考えています。短期的には経済への影響が出ますが、中長期的に見れば過度なインフレにならず、デフレやディスインフレにもならないとの論調であるように見えます。


今回のコラムは情報が多く、経済や金融の知識があまりない人には理解しにくかった部分もあるのではないかと思います。弊社のコラムでは、経済や金融、投資についての基礎的な知識習得のためのコラムも随時更新していく予定です。その他のテーマも適宜取り上げながら、皆様のお役に立つ情報を発信していきたいと思います。