海外ニュース IMFは世界経済の回復に地域差があると考えている
こんにちは。
exit.です。
今回は、IMFが2024年4月16日に発表した世界経済の見通し(World Economic Outlook)について見ていきたいと思います。
今回のレポートのタイトルとしては「安定的だが緩慢:経済回復に地域差があるが強靭性もある(STEADY BUT SLOW: RESILIENCE AMID DIVERGENCE)」となっています。
※世界経済は着実にコロナ禍から回復をしているが、その回復は遅く、さらに地域によってばらばらである、という内容です。
2024年の1月のレポートの予想経済成長率と比較すると、今回のレポートでは2024年の世界の経済成長率は3.1%から3.2%へとわずかに上方修正されましたが、2025年の経済成長率に関しては、3.2%で変更なしとなっています。先進国では、アメリカの経済成長率予測が2024年予測では2.7%、2025年予測では1.9%となっており上方修正されています。一方、EU圏の経済成長率は2024年予測及び2025年予測の両方で下方修正されています。日本は、2024年予測については変更がありませんでしたが、2025年の経済成長率予測は上方修正されています。アメリカは、FRBがインフレを抑え込むために2022年~2023年で金利の引き上げを行いました(現在は利上げ停止中で利下げ開始待ち)が、個人消費や労働市場は堅調な状態を維持して、インフレ率もFRBが目標とする2%を上回っている状態が続いています。経済成長率も高い状態で維持されており、利下げを行う時期の後ろ倒しや利下げ回数の下振れが意識されています。ヨーロッパでは、ドイツ経済の不調が足を引っ張っています。ドイツの2023年の経済成長率は-0.3%であり、2024年・2025年の経済成長率予測もEU圏でみた場合の数値を下回っています。ECBはインフレ率が落ち着いてきていることから6月には利下げを行うとみられています。この利下げが経済にどの程度影響を与えるのか、アメリカの金融政策とのデカップリングが為替に与える影響など、見るべきポイントは多くあるように思えます。日本は、ゼロ金利解除やYCC(イールドカーブコントロール)の撤廃などの政策変更を行いましたが、利上げについては慎重な見通しを継続しており、引き続き金融緩和的な環境となります。日銀が、利上げを行うのかに焦点が当てられていますが、住宅ローンを組んでいる人の8割程度が変動金利を選択していることもあり、利上げは難しいとする見方もあります。
新興国の経済成長の見通しでは2024年予測は0.1%上方修正されていますが、2025年予測については変更なしとなっています。中国の経済成長見通しは、2024年、2025年ともに変更なしとなっていますが、中国共産党が目標としている実質5.0%前後の経済成長には届かない数値となっています。ブラジルは2024年、2025年ともに上方修正されています。2022年2月からウクライナとの戦争状態が継続しているロシアでは、2024年予測及び2025年予測ともに情報修正となりました。2023年の中国の経済成長率は5.2%でした。ただし、この経済成長率は中国経済のリオープンによる人の流れの回復や政府による財政支出によって下支えされた数値となっています。現在の中国経済の動向としては、厳しさが続く不動産市況と消費が冷え込んでいるためデフレが不安要素として存在している状態です。また若年層の失業問題も残り続けています。インドの見通しについては、引き続き好調な内需が牽引しそこに労働人口の増加が加わることで、高い経済成長率を達成する見込みとしています。
前回(2024年1月) | 今回(2024年4月) | |||
国/地域 | 2024年予測 | 2025年予測 | 2024年予測 | 2025年予測 |
世界 | 3.1% | 3.2% | 3.2% | 3.2% |
先進国 | 1.5% | 1.8% | 1.7% | 1.8% |
アメリカ | 2.1% | 1.7% | 2.7% | 1.9% |
EU | 0.9% | 1.7% | 0.8% | 1.5% |
日本 | 0.9% | 0.8% | 0.9% | 1.0% |
新興国 | 4.1% | 4.2% | 4.2% | 4.2% |
中国 | 4.6% | 4.1% | 4.6% | 4.1% |
インド | 6.5% | 6.5% | 6.8% | 6.5% |
ブラジル | 1.7% | 1.9% | 2.2% | 2.1% |
ロシア | 2.6% | 1.1% | 3.2% | 1.8% |
※IMF「World Economic Outlook」より主要箇所を抜粋して作成
今回のレポートの経済見通しですが、先進国でもアメリカ経済の強さを感じさせる数値が出てきている一方、EU圏は下方修正されるなど、明暗分かれるような印象です。新興国についても、抜粋して作成した表では変化なしか上方修正となっていますが、南アフリカなどは予測経済成長率が下方修正されています。一部の国ではすでに利下げを開始しており(先進国ではスイス、新興国ではメキシコ)、今後はインフレとの闘いよりもインフレ率と景気動向の両方をにらみながら金融政策を決定する段階に移ったと考えることができそうです。
以下のリンクより今回取り上げました世界経済の見通しのレポートを読むことができます。リンク先は英語ですが、日本語版も読むことができます。
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2024/04/16/world-economic-outlook-april-2024
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