世界経済 ジャクソンホール会議で何が語られたのか
こんにちは。
exit.です。
今回は、先週開かれましたジャクソンホール会議の内容について見ていきたいと思います。
今年は去年と同様にオンラインでの開催となりました。また、8月26日~8月28日で予定されていた会議を27日のみに変更もしています。27日の9時スタートで16時ごろの終了となりました。アジェンダ(議題)の流れとしては以下の通りです。
9時~ 開会の辞、オープニングスピーチ
9時30分~ 金融政策と不平等なショック
9時55分~ 全体会議
10時15分~ 財政政策と不平等なショック
10時40分~ 全体会議
11時~ 財政政策と金融政策の相互作用
11時45分~ 全体会議
13時~ 午後の部開会の字
13時30分~ コロナショックと不平等な労働市場
13時55分~ 全体会議
14時15分~ 低金利と不平等経済
14時40分~ 全体会議
15時~ 財政政策と不平等経済
15時45分~ 前回会議
16時終了
全体としては、格差問題を主に取り上げているような印象です(Uneven:不平等という言葉がよく出てきていました)。今回のコラムではFRB議長ジェローム・パウエル氏(日銀総裁に当たります)のスピーチに焦点を当てます。
ジェローム・パウエル氏の講演の内容
耐久消費財よりもサービスの方が、インフレ率が高い局面が続いてきたが、新型コロナによるロックダウンから経済活動再開による需要の増大により耐久消費財のインフレ率が大きく上昇することになった。ただし、インフレはごく一部の耐久消費財に集中している。これは、需要の回復に供給(特に労働の供給)が追い付いていないことにも原因がある。ただし、長期の期待インフレ率は低い位置で固定されている。
新型コロナウイルス感染症の拡大により約3000万人の雇用が失われたが、2020年2月の水準と比べて約600万人低い水準まで雇用は回復をしてきているが、経済的な打撃は黒人やヒスパニック系などのような社会的弱者に集中している。労働市場は順調に回復しているが上下している局面である。企業や消費者は価格や賃金の上昇を予測している。賃金の上昇は生活の向上に不可欠なものだが、生産性の向上を超えて賃金が上昇することは好ましくないと考えている。経済後退局面で見られるような賃金の低下は見られていない。
※賃金物価スパイラルとは、物価が上がれば、賃金の引き上げ要求を行い、賃金が上がれば需要が増えてそれが更なる物価高を引き起こし、それがさらなる賃金引き上げを引き起こすという賃金と物価の上昇がスパイラル(螺旋)的に進行していくことです。
また、パウエル氏の講演の中で、テーパリング(資産購入の金額の縮小)について今年中に行うことが適切だと言っています。早ければ8月の雇用統計の数値(9月3日発表)などを見ながら9月21日、22日のFOMCでテーパリングを発表し、10月から資産の購入(800億ドルの財務省証券及び400億ドルの住宅ローン担保証券)を減額し、来年にテーパリングの終了を目指す、というものになるかもしれません。利上げはテーパリング終了後に初めて可能になりますので、資産購入額をどの程度減額していくのか次第ではありますが、どれだけ早くても2022年の後半になるのではないでしょうか。ただし、講演の中でパウエル氏はテーパリングと利上げのタイミングとは関係が無いと発言しています。
そして、テーパリングが開始されるということは、ドルの市場への供給量が少しずつ減ることを意味しますので、新興国でドル不足になっている国にとっては厳しい局面が来るかもしれないことも考慮しておく必要があると思います。さらに将来的には利上げするとなった場合には、新興国に流れていた投資資金が流出する可能性もあります。そうなってくると、新興国株式だけではなく、特に新興国債券市場に大きな影響が出る可能性があります。
ただ、テーパリングの可能性は今年に入ってから何度も取りざたされていたことでもありますので、市場に与える影響が大きくない可能性も考えておく必要はあります。ただ、引き続き慎重にリスクを見極めながら必要に応じて現金の比重を重くするなどしてご自身の投資のポートフォリオを組み替えながら運用していくことが求められる局面であると考えています。
最後にパウエル氏の講演のポイントをまとめます。
1.インフレに関してはかなりの更なる進捗が見られている
2.雇用の最大化に関して、ここ数カ月でかなりの明らかな改善が見られている
3.変異株が経済に与える影響は引き続き注視していく
4.テーパリングは年内に始めることが適切である
5.テーパリングと利上げのタイミングは関係がない
6.利上げには更なる厳格な基準を満たす必要がある
以下は、ジャクソンホール会議の講演概要などのリンクです。ジェローム・パウエル氏の講演内容以外にも資料が見れます。
次回も皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
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